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エスペランサ 二、そして少女には記憶がない④ [エスペランサ]

慌てて後をついていく。
走るというよりは瓦礫から瓦礫までをぴょんぴょん跳んでいくことになった。
すぐに少女は男の後方から隣の位置へと移動する。
抜かしそうになったが、抜いてしまうと男の姿が目に入らなくなってしまう。
それがなんとも心細いような気がしてやめた。
「あ。」
流石の少女にもその気配が感じられた。なにやらとても大きなものの気配。
一体みたいだけれど、きっと強いに違いない。
「やべぇ。追いつかれる。」
男が言った。隣を見ると、はぁはぁと息をつきながら
白いマントをひきずるようにして走っている。
 ケフィイイイイ
なにやら後方で声がした。振り向くと、四本足の白い異様な生き物がいた。赤いひとつ目みたいな球体がこっちを向いている。かなり大きい。少女の四倍はありそうだった。
「先にいけ。」
男がそういって少女を急かした。
少女は全然疲れてなかったし、たぶん逃げ切れると判断した。だが。
「あなたは?」
男のほうは明らかにへたばっていた。逃げるのは無理。絶対に。
「俺は、ここで奴を切る。」
かっこつけてそういうがほぼ間違いなく、このまま置いていったら死ぬだろうと思う。
 バキバキバキッ
音にはっと振り返ると、魔物が瓦礫の中の、塔らしきものに細長い足を突き刺していた。
全体的に蜘蛛みたいで気味が悪い。なんだって、あんなに足が細くて鋭いのだろう。
塔がビシビシいいながら壊れた。

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エスペランサ 二、そして少女には記憶がない③ [エスペランサ]

男は回転しながら二体の魔物に刃を一閃していた。
瞬く間に魔物が地に墜ちる。 
早技だった。残りの魔物は男に手を出したら命が危ないと悟ったのか、
ぱっときびすを返して逃げ出す。
と。
「嬢ちゃん。」
呼ばれた。
「何・・・?」
男が言う。
「後方にてとんでもなく強い魔物が来ていることには気づいているかい?」
正直、全然気づかなかった。
「あ、だから魔物が逃げたの?」
さきほど逃げ出した魔物について考えを巡らせる。
てっきり、男から逃げたと思っていたけれど・・・。
「ご名答。ってことで走れるかい?」
男の声はけっこう急いていた。ひょっとしたらかなり近くまで来ているのかもしれない。
「たぶん。」
頼りない返事に眉を寄せつつも、
「じゃあ、いっくぜ?」
といって走り出した。
慌てて後をついていく。
走るというよりは瓦礫から瓦礫までをぴょんぴょん跳んでいくことになった。
すぐに少女は男の後方から隣の位置へと移動する。
抜かしそうになったが、抜いてしまうと男の姿が目に入らなくなってしまう。
それがなんとも心細いような気がしてやめた。

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エスペランサ 二、そして少女には記憶がない② [エスペランサ]

そして、前方から緑色の何かが見えてきた。
低空をとんでいる。
あっという間にその何かは大きくなる。
どうやら昆虫の形をした魔物であるらしい。
数は五体。大きさは少女の顔ぐらいで、全身緑色かと思いきや、
腹のあたりに赤い線が入っている。
「おい。」
後ろで声がした。
「嬢ちゃん、武器持っているなら早くしないと近づいているぞ。」
はっとした。
気づけば、魔物はかなり接近している。
慌てて銃を構えて撃とうとしたが、魔物が早すぎて狙いをうまく定められない。
「しょうがねぇなぁ。」
いかにもめんどくさそうな口調で男は言う。
そして、次の瞬間少女のすぐ隣を影が通り抜けた。
 ビュッ
風を裂くような音とともに、タガーのようなものが魔物へと突き刺さる。
断末魔の叫びを上げる間もなく魔物は息絶え、
タガーは周囲にいた次の魔物に襲い掛かる。
「よっと。」
男が前かがみになり、さっと一回転した。
さらっと男の長い赤髪が風になびく。
だが、少女の目には一瞬だけ男の赤髪が水色に見えた。
誰よりも少女が驚いて何度か瞬きする。
するとすぐにその水色は消えうせ、赤色に戻った。
 ビリッ バキッ
男は回転しながら二体の魔物に刃を一閃していた。
瞬く間に魔物が地に墜ちる。 
早技だった。残りの魔物は男に手を出したら命が危ないと悟ったのか、
ぱっときびすを返して逃げ出す。

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エスペランサ 二、そして少女には記憶がない① [エスペランサ]

人である可能性も考えて声に出してみた。

正直に言うと、これは良くないやり方な気もする。

万が一、相手が人間でなかった場合、気配が気づかれていることを教えることにも

つながるのだ。けれど、少女が今もっているのは飛び道具だ。

間違えてうってしまうよりは敵に気づかれる可能性を選んだ。

だが、返事は意外なところからきた。

「ん、俺のことかい?」

声はすぐ後ろからで、それまで全然気配がしなかったのでびくっとした。

少女は驚きを言葉に滲ませながら聞く。

「何で・・・、いつからいたの?」

そういうと男の声は答えた。

「うーん、ついさっきかな。嬢ちゃんに助っ人がいるかなぁ。とか思ってわざわざ

 地の果てからやってきた。」

男のほうを振り向こうとして制止を食らった。

「待てって。今、振り向いたら連中に俺がいることまで知らせちゃうかもしれないだろ。」

少女はたまらず聞く。

「今、どこに隠れているの?」

男は答えた。

「大きな瓦礫の影ってとこかな?てか、声のトーン、もっと落としてくれないか?

 連中、近づいてきたし。」

言われたとおりに声のトーンを落とし、また尋ねる。

「連中?」

男はいい加減答えるのに疲れてきたようだった。めんどうそうに答える。

「異形の生き物。魔物だよ。・・・っと、おでましかな。」

声と同時に音が強くなった。

 ザザザザザザザ  ザザザザザザ・・・

そして、前方から緑色の何かが見えてきた。

低空をとんでいる。

あっという間にその何かは大きくなる。

どうやら昆虫の形をした魔物であるらしい。

数は五体。大きさは少女の顔ぐらいで、全身緑色かと思いきや、

腹のあたりに赤い線が入っている。


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エスペランサ 一.瓦礫の上で佇む少女 [エスペランサ]

それに。見渡せば、瓦礫の上に立っていることに気づく。

あたりは全て建物の崩壊跡。雲ひとつない空だけがいやに映えていて・・・。

少女は一人なのに気づいた。

けれども。

少女には何故ここにいて、そして自分が何者なのかということが一切わからなかった。

 

少女には、

記憶がなかった。

              ***

瓦礫の上を歩いた。

特に何を考えたわけではない。

ただ、少女はふらりふらりと歩いていた。

時々見上げる青空が、なんだか眩しくて見ていられない気持ちになって

少女はまた下を向く。

下には下で、家の壁と思われる建物の残骸やガラス片が落ちていた。

クマのぬいぐるみを見つけた。

薄汚れた黄土色のタオル生地でできたぬいぐるみだ。

瓦礫の間にはさまっている。

真っ黒な瞳が少女を見つめていた。

何故だろう?

胸が痛くなった。

ぬいぐるみへの関心が失せると少女はまた歩き出す。とぼとぼと。

何をするのではなく、何を求めるのでもなく、

むしろ何もないことを祈って歩いていた。

だが。

「?」

気配がした。今、確かに。足は止めないまま、耳をすませてみる。

 ザザ   ザザザッ

風の音ではない。何かが走る音。数まではわからない。だけど。

それは間違いなく生き物の気配で、少女に向かって走ってきていた。

体が勝手に警戒して、握っていた銃に力がこもる。

 ザザ ザザザ ザザザザザザザ・・・

微かだが音が激しくなった。この感じだと数は複数なんじゃないだろうか。

「誰?」

人である可能性も考えて声に出してみた。

正直に言うと、これは良くないやり方な気もする。

万が一、相手が人間でなかった場合、気配が気づかれていることを教えることにも

つながるのだ。けれど、少女が今もっているのは飛び道具だ。

間違えてうってしまうよりは敵に気づかれる可能性を選んだ。

だが、返事は意外なところからきた。

 

 


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エスペランサ ープロローグー [エスペランサ]

一、瓦礫の上に佇む少女

少女がはじめに感じたのは風だった。

少女のすぐ横を通り抜けていく風。

乾ききった風。

何故、こんなにも乾ききっているのだろうと少女は思ったのだった。

それから、ぽっかりとあいた心の穴に気づいた。

なんでこんなにも虚しくて、あるべきものがないのだろうと。

少女の横を通り抜ける風のように、乾ききってしまったのだろうと。

どうしてこんなにもどうしようもない脱力感と全てが終わってしまったような絶望が

この胸にあるのだろうと。

そんな想いだけがずっと心の中に居座っていて何度も不思議に思えてしまうのだった。

そしてふと、手の中にあるものを見下ろす。

小さな手に握られているのは一振りの銃。

これが大切なものだと思っていたのはわかる。

けれど。

何でこんなものをもっているのかは全然わからないのだった。

それに。

見渡せば、瓦礫の上に立っていることに気づく。

あたりは全て建物の崩壊跡。雲ひとつない空だけがいやに映えていて・・・。

少女は一人なのに気づいた。

けれども。

少女には何故ここにいて、そして何者なのかということが一切分からなかった。

少女には、

記憶がなかった。


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